山三(難波)

せっかくミナミまで来たのに、どこにでもある店に入っても仕方ない。
来る前から、地元のお酒のおいしい、一人でゆっくり飲める店に行こうと決めていた。
そして、ここを見つけた。
知る人ぞ知る、山三(やまさん)である。
午後7時頃行くと、すでにのれんを出していた。
なぜか、自転車が2・3台入り口に置いてある。
覗いてみると、狭い店はほぼ満席。
ああ、だめかなと思うと女将さんと目が合い、一人なら入れるとのこと。
地元のおじさん達が飲んでいる中を、入っていったのであった。


店はカウンターのみで、15・6人も入れば、満席。
勝手がわからずきょろきょろしていると、隣の紳士が声をかけてくれた。
「ここ、初めて?」
「ええ、そうですけど…」
「ここのご主人はね、利き酒で有名な人で、全国の蔵を回って日本酒を買い付けてくるんだ。最近はベルギービールも置いてあるよ」
「へ〜、ベルギービール、ですか」
「エビスもあるけどね」
とりあえず、エビスを頼み、肴を見ると太刀魚の刺身がある。
これを注文し、ゆっくり待ちながら、隣の紳士との会話を続ける。
「知らない銘柄がほとんどですけど…」
「日本酒って、杜氏の人柄が出るんだ。そういうところまで見て、いい酒を買ってくるんだよ」
「そうなんですか。すごいですね」
店の中には、ご主人がいろんな蔵を回ったときの写真や、置いてある日本酒についての詳しい説明を書いた冊子などが置いてある。
そういうものをぱらぱらめくっているうちに、肴もでてきて、お酒を注文する。
…うーん、おいしい。初めての銘柄だけど、久しぶりに飲む歓びを感じた。
「僕は実は焼酎の飲み屋をやっているんだけどね、いい日本酒が飲みたくなったら、ここにくるんだ」
へ〜そうなんだ。その道のプロの人もくるんだ。
「ここに、勉強に来る同業者も多いんだよ」
すごいなあ、さすがネットで検索したら、トップでヒットするわけだ。
「あなた、運がいいよ。たいていは6時に来ても満席の場合が多いからね」
置いてある料理は、特にこれといった特徴もないが、その反面、個性的な日本酒達に合う。
女将さんも手際よく注文のを捌き、ご主人も穏やかな感じで、出しゃばらず、でも「こんな感じのお酒を」というと、ぴったりのものをさりげなく出してくれる。
多くの客は、なじみの人。一人で来て、しばらく飲んで、帰って行く。
「久しぶり!」とかいう言葉を交わして…
隣の紳士は自分のお店の名刺を僕に渡して、帰って行った。
ここで会ったことを言えば、サービスしてくれるって(^^)
これも大阪的。
そして、僕は一人の時間を、まったりと楽しんだのであった。
もう30年になる老舗。
ミナミに出たら、必ず寄ろう。
いい店に出会えた夜だった。

2 個のコメント

  1. 紳士の焼酎の店も気になるねー。
    続編期待してまっせー。: )

  2. 紳士のお店は、大阪の寝屋川でした。
    僕の住んでいるところからは、結構遠いのですが、何かの折に是非足を運びたいと思っています。
    こういう繋がりができるのも、また下町の飲み屋の楽しさですね。
    papaondoさんなら、泡盛のおいしいお店をいくつかご存じでは?
    来年の夏は沖縄に家族で行こうと目論んでいますので、また教えてください。
    よろしければ、そのときご一緒に…
    では、また〜

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