良心の囚人に、当然の無罪判決

今、日本という国は大きな曲がり角にあることを、示唆する事件が起きた。
防衛庁官舎の新聞受けに、イラク派遣反対のビラを入れた平和活動家が、不当逮捕され、75日間も拘置所に勾留されたという事件だ。
検察側の懲役6ヶ月という求刑に対し、東京地裁八王子支部は全員に無罪を言い渡した。

反戦ビラ訴訟、3被告に無罪 地裁八王子支部(asahi.com)
判決は、「ビラ入れは政治的表現の一つで、商業的宣伝ビラの配布に比べて優越的な地位にある。それなのに、正式な抗議や警告といった事前連絡もせずいきなり検挙し、刑事責任を問うのは憲法の趣旨から疑問だ」と批判。「刑事罰を科す程度の違法性はない」と結論づけた。

当然と言えば、当然の判決である。
判決にあるように、これは憲法21条「表現の自由」が保障する、政治的表現の常識内の行動であり、これをわざわざ逮捕・拘留・起訴するところに、大きな政治的意図を感じてならない。


折しも、自衛隊のイラク派遣の1年間延長が決定し、また、海外派遣を「本来任務」にするなど、これまでの自衛隊のあり方が大きく変えられる中で、「お上のすることに口を出すやつは許さない」という、権力の恐ろしさをかいま見た気がする。
新防衛計画大綱を決定 自衛隊の海外派遣「本来任務」に(asahi.com)
派遣延長、首相の説明「不足」76% 朝日新聞世論調査(asahi.com)
こんなことが起きるのも、tonetalkで再三指摘しているように、アメリカ追従の政治を行っているからである。ブッシュにしっぽを振れば振るほど、僕たち国民と政府との距離は遠くなる。
これが国として赤信号であることを、小泉首相はどれほど理解しているのであろうか。
元防衛庁局長、「米国のポチになるな」 派遣反対集会で(asahi.com)
さて、今回の事件で国際的人権擁護団体であるアムネスティ・インターナショナルは、拘留された活動家を「良心の囚人」と定義した。

日本:平和運動家の逮捕拘禁は、表現の自由の侵害
アムネスティは、この運動家たちは、表現の自由を侵害されて拘禁された、良心の囚人であると考える。表現の自由は、日本国憲法の21条、そして日本も締約国となっている自由権規約の19条に定められている。この運動家たちは直ちに釈放されなければならない。

世界に誇る平和憲法を持つ日本という国に住む者の一人として、この状況を恥ずかしく思う。
このような意見を載せているBlogが検挙されるような、そんな国にはしないように。
憲法に書かれているように、権利というものは天から与えられたものではなく、僕たち一人一人の「不断の努力」によって守られていくものなのである。
この日本の行方を人任せにだけはしたくないと思う。

3 個のコメント

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