「いま、会いにゆきます」

最近、同じようなテーマの映画ばかり観ているような気がする。
なんでかなあ…
これは去年公開され、ヒットした佳作。
その当時はさほど気にしていなかったのだが、とある映画を借りてきたときの予告編で観て、今度はこれを観なくっちゃと心に決めていたのだ。

いま、会いにゆきます スタンダード・エディション
東宝 (2005/06/24)
売り上げランキング: 221

心のつぼにはまってしまって、むせび泣いた。
こんなに泣いたのは、久しぶりかもしれない…


主人公の巧は、1年前に最愛の妻を病で亡くす。小学校1年生の息子佑司を残して。
そのとき、「雨の季節になったら戻ってくる」と言い残して。
巧は生きるのも仕事も不器用な男。
澪はそんな彼が高校時代から片思いしていた相手。なぜか2年ずっと隣の席になっていて。
大学進学を機にお互い離ればなれになるのだが、どうしても彼女のことを忘れられない巧は、東京まで会いに行く。
久しぶりの再開、初めてのデート、何通もの手紙のやりとり…
これから始まることを予感していたのに、巧は運動のやり過ぎで、身体に不調を抱えてしまう。
将来に絶望した彼は、澪とのことも諦めようとする。
だけど、忘れられなくてもう一度東京に行った彼が見たものは…
まあ、こんな風に書くと普通のラブストーリーだが、構成の妙が効いている。
約束通り雨の季節に戻ってきた澪は、自分の名前も巧のことも佑司のことも忘れてしまっていた。
それが、一緒に生活することで、自分たちのこれまでのことを巧から聞く中で、もう一度巧を愛し始める。
このあたりの描き方が新鮮で、まるで高校生の男の子と女の子が少しずつ近づいていくように、お互いの距離を縮めている。
巧が「キスしていい?」と言って唇を合わせるシーンは本当に純粋だった。
実は澪は死ぬときに息子の佑司と一緒に、タイムカプセルの中に二人でやりとりした手紙と、自分の日記帳を入れていた。
それを読んだとき、自分がここに戻ってきたことの意味を思い出すのだ!
その後、澪はまるで自分がいなくなるときのために、佑司に卵の割り方や洗濯物の干し方を教えていく。
そして、1週間も前に佑司の誕生日会をやる。ケーキ屋にバースデーケーキを12年間予約して…
その夜、二人はベッドの中で愛し合う。
その美しさと切なさが、心に染み渡った。
季節は移り、夏が来て澪は二人の前を去る。
「私の幸せは、あたなよ」という言葉を残して…
この後の、巧が澪の日記帳を読んでいくシーンがの映画のクライマックス。
実は、巧が彼女に気づく1年前から、澪が彼のことを好きになっていたのだ。
いつも隣だったのは、彼女が仕組んでいたこと。
離ればなれになってから、彼女も巧に会いたくて、何度も電話の呼び鈴を途中で切っていたのだ。
それが、実は巧が2度目に東京に来たとき、去る彼を追って交通事故に遭って意識を失ってしまう。
その夢の中で、澪は9年後の自分の未来を見てしまうのだ!
巧と結ばれ、佑司を産み、死んで1年後にもう一度帰ってくることを…
同時に、自分は28歳で愛する二人を残して、死んでしまうことも知るのである…
それでも、彼女は彼と生きていくことを決心する。
そして巧に会いに行くのだ。
再開したときの澪の表情は、自分の生と死を受け入れ、新しい命をこの世に生み出す女性の強さと美しさに満ちている。
このときの澪の台詞に、僕は涙が止まらなかった…

大丈夫よ、私たちは
私とあなたはずっと一緒よ
そう決められているの
たった一人の相手なのよ
…好きよ…

そういって、見渡す限り広がるひまわり畑の中でキスをする二人の姿ほど、純粋で美しいものはない。
出会うべくして出会い、一生の間で2回恋をする…
こういう愛を、心からすばらしいと思った。
見終わった後も、とても温かい気持ちが心に残る、素敵な映画だ。
そして、僕も妻とのいろんなことをまざまざと思い出してしまった。
僕はあまりいい家庭ではなかったので、その分家族がほしかったんだ。
複雑な生い立ちや家族のことを知った上で、一緒に生きていってくれる人を探していた。
妻は静かに僕の話を聞いてくれた。
そして、結婚を受け入れてくれた。きっと彼女にとっては、大したことではなかったのかもしれないけど…
そのとき、「ああ、この人となら僕は幸せになれるかもしれない」と思ったことを覚えている。
身体を壊して倒れたときも、寝ずに側に付き添ってくれた。
あのとき、僕は彼女にもう一度惚れ直したんだ。
今年は結婚して10年目。
もう10年、やっと10年…
気がつけば、婚約指輪も「肩がこる」なんて言って、ここ数年していなかったな。
もう一度、指にはめよう。この出会いの意味を、もう一度かみしめよう。
記念日には、心を込めて、何かプレゼントしよう。
ああ、こういう映画にはまるのも、ようやくわかってきた。
僕は家族を求めてるんだ。
そして、それはなんか遠くにあるように思っていたけど、
もう手に入れているんだ。
「青い鳥」のようにね。

2 個のコメント

    • AO-T on 2006年4月23日 at 11:43 AM
    • 返信

    こんにちは。昨日はお疲れ様でした。久しぶりにお会いでき、とても嬉しかったです。お話しをする中で、TONE-Tの奥さんへの深い愛情と、同時にTONE-Tの暖かいお人柄を感じました。なんだか、とても嬉しかったです。奥さんへの愛情を、人に素直に表現することができる。とても美しいことですね。
    今日、「いま、会いにゆきます」のDVDを買いに行く予定です。初めて見た時は、主人公に自分を投影しすぎて気づかなかったことが多いようなので、また新しいことを発見したいですね。

  1. こんばんは。コメントありがとう。
    僕も久しぶりに会って、お話しできてうれしかったです。
    僕はつい話しすぎてしまったようで…
    でも、それはあなたの彼への純粋な想いに触発されてしまったから。うらやましいです。
    さて、この映画、見れば見るほどよくできています。澪が着ている服や死んで1年後に帰ってくることの本当の意味など、いろんな仕掛けを考えてみると、さらに味わえます。
    ラストで澪があれだけ自信を持って「大丈夫」と言えるのは、実は二十歳の彼女が9年後へジャンプして、そこで巧の気持ちをしっかり受け止めて帰ってくるからですよね。
    自分がいなくなって1年たっても、自分のことをしっかり愛してくれている彼のことを知って、もう一度今に戻り、彼に再会するのです。
    そう考えると、この二人の出会いは運命であり、必然なのですね。
    そういう出会いをしたいものです。
    お互いにもう出会っているのかもしれませんが…
    とりとめのない話しになりました。
    では、また。

Haru へ返信する コメントをキャンセル

メールアドレスは公開されません

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください