きっとあの時の僕は
久しぶりにあなたと一緒で
はしゃいでいただろう
青い空に白い雲
あなたは横にいた
二人で手を繋いで
いつより遠くまでの散歩
川の隣の踏切
カンカンと音が響き出す
あなたの手に力が入った
足の下には4本のレール
突然の甲高い汽笛
マルーン色の塊と太陽を反射する窓
その後世界が止まった
あなたの手はどこにもなかった
僕は無数の泡の中に放り出されて
なぜか息は苦しくなくて
思いっきり水から飛び出したら
ストロボの目映い光に包まれて
あなた以外の知らない人ばかりで
痛かった
とても痛かった
頭には包帯が巻かれていた
「右手は折れている」という男性の声
腕が焼けるような液体をかけられて
僕は何もわからなくなった
その後覚えているのは
真っ白な天井と真っ白な壁
周りを囲む木の柵
その中が僕の世界だった
後はたまに遊んでくれるお姉さん
「お母さんはどこにいるの?」
「他の部屋で治しているよ」
「また会えるの?」
「…会えるよ…」
その時の僕に
それ以上の何が理解できただろう
毎晩のように見る夢
踏切と迫り来るマルーン色の電車
落ちる川の水泡と浮かび上がる僕
アルバムに載っている知らない女性
あの時のあなたの覚悟を
今の僕ならどのくらいわかるだろうか
ねえ、お母さん
僕はいい子だった?
グズグズ言って困らせなかった?
夜泣きはしなかった?
僕のこと抱きしめてくれた?
僕のこと 好きだった?
僕が
原因じゃ
ないよね?
あなたはもういない
あなたを思い出すよすがもない
でも信じている
僕の心の小部屋に
あなたが佇んでいることを
そしてきっと会える
僕の人生の最後の日に
Recent comments