かなしい人

抱えているものが 大きすぎて
ことばにならないように
あなたは 口を結んで
椅子に座っていた
ちょっと身体を傾けて
その黒い眼は 少し潤んでいて
あなたの心に立つさざ波を
映す水面だ
ひとは 誰も
人に伝わらない
かなしみを抱きしめていて
それを磨きながら
生きているのかもしれない
生まれてくるときに 掌を握りしめているように
その中に 大切に抱えながら
そのかなしさが その深さだけ
あなたを
うつくしくしているのだ
かなしい人よ
あなたがあなたのうつくしさに気づかないように
自分が不幸せでないことを知らないだろう
なぜなら
僕が あなたを 見つけたから
また あなたに出会えたとき
あなたの笑顔を見たいと願う
今日のような
やさしい夕陽の下で

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