「さとうきび畑の唄」

縁があって、「さとうきび畑の唄」を見る機会があった。
2年ほど前にTVで放映され、好評を博したドラマということだが、恥ずかしながら僕は見ていなかった(TVはほとんど見ない生活をしているもんで)…

さとうきび畑の唄 完全版
TBS (2004/01/23)
売り上げランキング: 5,873
通常24時間以内に発送

配役に今の若い世代を意識した作りだなあと思いつつ、そして明石家さんまのべたべたの大阪弁にちょっと違和感を感じながらも、いつしかドラマの世界に引き込まれていた。
日本で唯一地上戦が行われた沖縄、そこに暮らす写真館の一家の姿を通して、静かに平和の大切さを訴えていて、好感の持てる作品だった。
全編を流れる森山良子の「さとうきび畑」もドラマに深みを与えていて、心にしみた。
最近、こういうドラマを見ると、何よりもまず父親の立場で感情移入してしまう。
明石家さんまの演じる父親の心情が心に響いて、気がつけば頬が涙で濡れていた…


自分の子どもが「この命は天皇陛下に捧げたもの」というときの、親としてのショック。
親として、そんなことのために育てたのではないのに…、国に自分の大切な子どもを奪われたつらさ…
「教育」の恐ろしさとは、そういうものだろう。
だから、疎開先に次男が帰ってきたときに、いつもひょうきんな父親が初めて真面目に「親より先に死ぬな」と語るところは、涙なしには見られなかった。
そのときに語られる、子育ての中のさまざまな思い出…
そう、親は子ども自身のために子どもを育てるのです。決して、国のためなんかじゃない。
その次男が、敵の前に死を覚悟して飛び出していくとき、楽しかった家族との思い出が脳裏をどんどん横切り、泣きながら走り出していく…
誰に人が最愛の家族といつまでも平和に生きていることを、奪う権利があるのだろう。
どんなに理由をつけようとも、戦争は殺し合いでしかない。
人が戦場で死んでいく前に何を考えるのか、国のトップの人間は考えたことがあるのだろうか。
どんなときにも笑いを忘れない父親。一見軽いけど、「笑いは人を幸せにする」…その通り。
その父親が傷ついた米兵をどうしても殺すことができず、上官に「こんなことのために生まれてきたんじゃない。家族に囲まれて天寿を全うしたいだけ」と叫ぶシーンに、この作品のテーマが凝縮されているのだろう。
自分らしく生きることを選んだ故に、上官に殺された父親…
そんな父親の残した写真に写っている人々の笑顔…
その対比が、戦争の非人間性を鮮やかに表現していた。
確かに、最初と最後に出てくる現代の若い娘の役割がもう一つわかりにくかったり、沖縄戦そのものへの説明不足を感じたが、わかりやすく心のストレートに迫ってくる佳作だと思う。
中学生・高校生など、若い世代に是非見てほしい。
そして、これを過去の話だと終わらせずに、今の日本がどこに向かおうとしているのか、目を向けるきっかけにしてほしい。
戦後、少なくとも日本は戦争の名の下に、誰の命も奪っていないし、誰も命を失ってはいない、そのことの大切さをいつまでも守り続けるためにも…

1 個のコメント

  1. さとうきび畑の唄

    2004年8月4日にTBSで放映した「さとうきびの唄」。その主題歌になっていた「>さとうきび畑」。ざわわ〜ざわわ〜しみじみな歌詞です。それを聞きながらドラマを見…

コメントを残す

メールアドレスは公開されません

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください