人は自分の原点に戻る

このところ、体調が思わしくなく、久しぶりに病院に行った。
待合室でふと手に取った一冊の本。
懐かしの童謡、唱歌の歌詞が、美しい写真とともに紹介されていた。
「この道」、「里の秋」、「浜辺の歌」…
思わず、口ずさみたくなる歌達。
「赤とんぼ」など、歌詞の意味を一つ一つ教えてくれた。、祖母の声とともに懐かしく思い出した。
たまらなくなり、帰りにCD屋に立ち寄る。
聴くなら、一流の演奏で聴きたい。
それで、ようやく探し出したのが、この一枚。

Bridge~ベスト・オブ米良美一
米良美一
キングレコード (2000/12/06)
売り上げランキング: 91,470

「もののけ姫」のテーマソングで一躍有名になった米良美一のベスト版。
日本の唱歌から西洋のクラシックまで、幅広いレパートリー。
女性のソプラノとは違う、カウンターテナーの透き通った声色に酔いしれる。


明治生まれの祖母に育てられた僕は、「夏は来ぬ」など古語の唱歌を、その言葉の意味一つ一つ教えてもらったものだ。
「来ぬ」は「来た」という意味だとか、「卯の花」は白い花だとか。
また、「赤とんぼ」の「おわれてみた」のは、「負われて」であって、「追われて」ではないとか…
どうでもいいことかもしれないが、こういうことが子どもの記憶にとても深く刻まれることが、自分の経験からもよくわかる。
おかげで、空で歌える唱歌・童謡は両手に余る。
これらを自分の子ども達に伝えていくことが、亡くなった祖母への恩返しなのかもしれない。
また、大学時代合唱に明け暮れた僕にとって、バッハ(グノー)の「アヴェ・マリア」は好きな1曲。
毎年、クリスマスにヘンデルの「メサイア」を歌っていたから、アリア「高い山に登れ」も空で歌える。
もちろん、僕程度の歌唱力ではソリストなんてできるはずもないが、「メサイア」のテナーのソロ部分は一度やってみたいもんだ。
思えば、人って知らず知らず自分の原点に戻ろうとするものかもしれない。
特に疲れ、自分を見失いそうになっているときには。
自分のコアにあるもの、それをもう一度確かめようとするのだろう。
毎日糠床の手入れをするのを厭わないのも、祖母に毎日手伝わされていたからかもしれない。
彼女はさしたる意図もなく、僕にさせていたのであろうが、そのときの糠の匂いは思い出に染みこんでいる。
こうして、僕という人間の骨格が作られてきたのだろう。
そう考えれば、僕は毎日家でしている一挙一動が、子ども達に目に見えない影響を与えている…
怖いことだけど、あまり深く考えても仕方がない。
僕は僕以上でも以下でもないのだから。
少なくとも、台所に立ち、料理などに精を出している僕の姿が焼き付いて、家事を厭わない男になってほしいものだ>息子達へ

2 個のコメント

    • AO-T on 2005年10月10日 at 12:45 PM
    • 返信

    初コメントのAO-Tです。おわかりでしょうか。
    喉の調子、いかがですか。今日は、昨日、彼の姪っ子さんに「月」を歌ってあげたこともあって、思わずコメントしてしまいました。
    一緒に散歩に行って、お月様を指差す彼女に歌ってあげたのですが、26歳になっても、月を見たら「月」のメロディーが蘇ってくる。。良い祖母を持ったのだなぁと、歌いながらしみじみと感じました。
    一方、以前オーストリアで、多国籍(日本、中国、イタリア、オーストリア、スロバキア)の友達と盃を交わしていた時に、それぞれの国の代表的な歌を歌おうということになったのですが、その時は恥ずかしいことに「赤とんぼ」の歌詞しか出てこなかったのです。しかも一番だけでした。
    学生時代は、ずっと音楽の時間が大好きだった私には、とてもショックでした。それに、日本語教師としてオーストリアへ渡っていたのですから、なおさらです。
    でも、そのことがあって、情景が思い出されるような、日本の美しい歌を見直すことになりました。
    美しい音楽も、歌詞も、私のような弱い頭では歌っていなければ忘れてしまいます。ぜひ米良美一のCDを買いに行こうと思います。自分の子供にもすてきな日本の歌を教えてあげたいですからね。先生も今頃、先日お会いしたあのかわいい娘さんに、歌い聴かせてあげているのでしょうか。。。
    http://www5b.biglobe.ne.jp/~pst/douyou-syouka/

  1. AO-Tさん、お越しくださり、ありがとうございます。
    「三つ子の魂百まで」といいますが、小さい頃の経験って、ほんと大事だと思います。
    それぞれの国の代表的な歌ですか…
    僕なら「ふるさと」を歌いますでしょうか。
    3番があまり好きではありませんが(まあ、作者にとっては意味あるものなのですが…)、僕は「故郷」は負けて帰っても、暖かく迎え入れてくれるものじゃなくては、いけないと思っています。
    それでこそ、自分の故郷といえるでしょう。
    AO-Tさんも、ぜひそういう家庭を作ってくださいね。
    家庭は疲れた心と体をいやし、またがんばろうという気持ちになれるところじゃなくちゃ。
    僕のところがそうかどうかは、ノーコメントということで(^^)
    それはさておき、3歳の娘はアンパンマンが大好きで、その歌ばかりせがんできます…
    これをご縁に、これからもまた遊びに来てください。
    では、また。

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