Category: Novel

小説・第9話

ユミは僕に手紙を渡すと、そのまま消えてしまった。 僕はどうしていいのか分からず、しばらく立ち尽くしていた。 ようやく決心が固まり、僕は手紙を開いた。 <ヒビキ君、私、あなたのこと、ほんと好きだったよ。 でも、もう限界。あ …

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小説・第8話

大切に、大切に水を注いできたグラスに、いつしかヒビが入り、少しずつ水が漏れていく。 気がつかないうちに、グラスが空っぽになる。 僕達の恋は、そんな風に壊れていった。 ユミは、僕を好きになろうと、努力していた。僕の好きだっ …

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小説・第7話

あの頃の僕は、ホントにガキで、独りよがりで、女の子を丸ごと受け止めるような度量なんて、持ち合わせていなかった。ユミへの思いも、今から思えば、自分勝手なものだった。 ある時、演劇部の一人が転校するというので、お別れ会を開い …

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小説・第6話

マルーン色の電車の窓から、光る海が見える。 僕とユミがステディになってから、二人で過ごす時間が長くなった。高校からの帰りも、仲間と帰るのではなく、ユミと一緒に帰るようになった。 季節は、高校に入って3度目の春を迎えていた …

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小説・第5話

気がつくと、陽は西に傾き、夕暮れが迫っていた。 ユミのことを思い出していると、知らぬ間に時間が経ってしまっていた。テーブルの上には、空になったビール缶が転がっていた。 何か腹に入れないとな…… 僕は3日ぶりに、家の外に出 …

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小説・第4話

僕はその頃、演劇部の仲間から「クール」だと言われていた。 「クール」って「頭がいい」とか「冴えてる」ってことじゃなく、「冷淡」だっていうこと。僕は人見知りだった。人と話すことはどちらかと言えば苦手で、一人の時間はもっぱら …

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小説・第3話

高校1年の冬、僕は女の子のことをちっとも分かっていなかった。今は分かっているかと言われると、心許ないが。 その頃興味があったことといえば、詩を書くことや、曲を作ること。リコは好きな彼とつきあっていた。リコにあっけなく振ら …

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小説・第2話

僕達の高校は、山の中腹にあった。高校までは長い坂道が続いていた。道ばたには桜が植えられていて、春には満開の花の下を歩くことができた。 高校自体は旧制の時代からあり、一応「進学校」の中に入ってはいたが、至ってのんびりした校 …

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小説、第1話

「タイトル・未定」 山の中腹にある公園。 遠くには、海が光って見える。 ベンチには、君が座って、僕を見つめている。 そして、ふっと微笑み、僕に話しかける。 「ヒビキ君、大丈夫?」 僕は何とも言えなくて黙っている。 すると …

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