人魚姫のテーマ

ああ、聞こえるでしょう この歌が
さあ、私のそばにずっといて

こんなに月が青い夜には
風の坊やがハープを奏でる
私の髪が長く揺れてる
月の光に黒く輝きながら

ああ、聞こえるでしょう この歌が
さあ、私のそばにずっといて

今夜はとても風が すずしいから…

あなたは気づいていないけれど
あなたを見上げて歌ったのは 私…
あなたは静かに耳を傾け
愛の調べに身を任すの

ああ、聞こえるでしょう この歌が
さあ、私のそばにずっといて
ああ、聞こえるでしょう この歌が
さあ、私のそばにずっといて

今夜はとても風が すずしいから…

(C)1981・1998 All right reserved

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人魚姫のテーマ

小説・第4話

僕はその頃、演劇部の仲間から「クール」だと言われていた。
「クール」って「頭がいい」とか「冴えてる」ってことじゃなく、「冷淡」だっていうこと。僕は人見知りだった。人と話すことはどちらかと言えば苦手で、一人の時間はもっぱらギターを弾いて過ごしていた。
仲間達が何かの話で盛り上がっていても、その横で「冷めた」顔して座っている。そんな男だった。彼らがそんな僕をそのまま「放って」おいてくれたおかげで、僕は「クール」なまま、問題もなく大きくなっていった。
僕達は交換日記をつけていて、そこには部員じゃないコも書き込んでいた。テーマはいろいろだったけど、「友情」や「愛」などについて、みんな自分の意見や思いを綴っていた。僕は一体何を書いていたのだろう。全く思い出せないが……。
学校や先生に反発するわけでもなく、人生に大きな不満があるわけでもなく、声高に歌いたい「主張」があるわけでもない。そう、僕は本当は「素寒貧」だったんだ。
                   ☆
僕達は時間があると、部室に何という理由もなくたまっていた。そして、とりとめのない話に花を咲かせる。時間の贅沢な無駄使い。その中で、僕の友達も少しずつ広がっていった。
演劇部にも新入生が入って、男の子の比率がぐっと下がった。僕達はすぐ仲良くなって、部活の終わりには、先輩・後輩で一緒に帰るようになった。僕達はいつもぐちゃっと通学路の坂道を下っていって、手紙の交換も頻繁にしていた。
手紙は休み時間にそっと机の上に置かれるか、友達の友達から渡されるか、直接に本人から渡されるかいろいろだったが、1日2〜3通になることもあった。書いてあることは、「今は英語の授業中。つまんない」といった類いのものだったが。その手紙が「これはどうやって開けるのだろう」というように「複雑」に織りこまれていた。折り方もいろいろあって、開け方が判明するまで、頭をかしげるものもあった。
手紙は男女の区別なく送り合っていたが、そのうちユミとの交換が多くなっていった。その頃になって、僕はようやくユミに気がついた。部室でわちゃわちゃしているとき、いつも僕の傍にいる女の子。
“Boy meets girl”、という感じじゃ全然なかった。そんな「ドン!」と落ちる感じじゃなく、振り向いたら、そこにいた。そして、気がついたら、僕は彼女のことが気になり始めていた。
僕の高校は服装が自由だったが、ユミは白のカッターシャツに、標準服の紺のスカートをはいていることが多かった。ボーイッシュな短い髪に、口元には八重歯、そして小さな胸。
彼女も詩を書くのが好きだった。手紙にも時々書いてあった。僕は彼女の感性にだんだん惹かれていった。そのうち、彼女と意識してしゃべるようになった。
演劇部で出会った最初の頃は、僕のことが嫌いだったこと。理由は聞かなかったが。また、放課後僕が後輩のレイナを自転車に乗っけて、送って帰っているのにやきもきしているとか。深い理由はなく、帰る方向がたまたま同じだったからだけど。ユミとは、帰る方向は正反対だった。かといって、帰る方向を彼女に合わせることをしなかった。なんでだろう、そんなことより、みんなと一緒にいる方が楽しかったからかな?
そんな感じで、僕達の「恋」はゆっくりと始まった。それが、高校の終わりまで続いて、たくさんのハートブレイクを残すものになるとは、その時の僕はまだ知らなかった。
(続く)

小説・第3話

高校1年の冬、僕は女の子のことをちっとも分かっていなかった。今は分かっているかと言われると、心許ないが。
その頃興味があったことといえば、詩を書くことや、曲を作ること。リコは好きな彼とつきあっていた。リコにあっけなく振られてから僕は、女の子には少し臆病になっていた。
昼休みになれば、仲のいい男の子達とトランプに興じ、休み時間は気が向いたらギターを弾いて、女の子の輪に囲まれたり。そんなこんなで、僕の高1は過ぎ去ろうとしていた。

自分で作った歌などをぼちぼちと披露していると、噂が広まったのか、演劇部から曲作りの依頼がきた。驚いたが、新入生歓迎公演でミュージカルを上演するとのこと。
演目はアンデルセンの「人魚姫」。台本を見せてもらって、これならできると思い、引き受けることにした。原作も読んで、僕なりに歌詞のイメージをふくらまし、歌う役者に合わせて、キーの高さを調節した。最終的に、テーマソングも合わせて、5曲完成させた。
裏庭の隅っこにある、古ぼけた建物の2階で、僕は演劇部の面々に、曲を披露した。歌は評判がよく、採用となった。その頃、僕はまだバンドを組んでいなかったので、一人でギターを演奏して、カセットに伴奏を吹き込んだ。
公演当日は、他の高校から何人か見学に来ていたが、肝心の新入生はいなかった。劇の最後では僕もギターを持って舞台に上がり、テーマソングをアップテンポで歌った。これを機に、僕は演劇部に出入りするようになった。

演劇部は、僕にとって不思議なところだった。男子が部員の半分もいる。僕は、演劇は女の子のするものだと思っていた。そして、男の子と女の子が仲がいい。まるで同性同士の友達のように、男女でジュースのカップを回し飲みする。お互いに、役柄の名前で呼び合っていた。これまで付き合ってきた子達とは、全然違っていた。
ある時、演劇部でケーキの食べ放題に行くからと誘われた。男がケーキ?って思ったが、男の子の部員達は楽しそうにしていたので、試しについていくことにした。
僕は案の定、ケーキ2個でギブアップしてしまった。みんなぱくぱくとケーキを平らげた後、帰り道では歩きながら発声練習をし始めた。ーー”アメンボ赤いなあいうえお 浮き藻に小エビも泳いでる”……
「ヒビキ君も、やりなよ」って誘われたが、僕には道の真ん中で、ギターも持たずに大声を張り上げるなんて、とうていできなかった。

でも次第に、演劇部は僕にとって、居心地のいい場所になっていった。そのままの僕で、ウエルカムという感じ。オープンで、部室にはいつも部員以外の子達も出入りしていた。僕の高校時代で大切な友達は、演劇部との出逢いからできた。

え? 前置きが長いって?
あの時、僕が吸っていた空気感を伝えないと、ユミと恋をした感じがわからないかなって思って。
OK、次はいよいよユミとの出逢いを書くね。
(続く)

小説・第2話

僕達の高校は、山の中腹にあった。高校までは長い坂道が続いていた。道ばたには桜が植えられていて、春には満開の花の下を歩くことができた。
高校自体は旧制の時代からあり、一応「進学校」の中に入ってはいたが、至ってのんびりした校風だった。先生達も「高校時代はしっかり楽しめ」というスタンスで、そんな中で僕達はのびのびとハイスクールライフを楽しんでいた。
高校に入った頃の僕は、これと言ってやりたいこともなく、クラブを転々として過ごしていた。唯一の趣味がギターを弾くこと。放課後、独りでぽろぽろ弾いていた。
授業は退屈で、かといって先生に反抗するほどの不満があるわけでもなく、僕の日常は静かに過ぎていった。教室の窓から見える街の風景を、ぼんやりと眺めるのが好きだった。

そんなある日、先生が転校生を紹介した。
眼の大きな女の子だった。僕は彼女を見たとたん、釘付けになってしまった。笑顔が素敵で、女の子らしいふくよかな体つき。僕は数日もたたないうちに、彼女と友達になった。
彼女はリコだった。1ヶ月もすると、僕達はくだらない話もする関係になった。
僕の高校では南と北に校舎があり、その間を渡り廊下が繋いでいた。ある時放課後渡り廊下を歩いていると、リコが北校舎のベランダに一人でいるのが見えた。僕はしばらく考えて、決心して階段を上っていった。
リコは空を見上げていた。吹奏楽部の練習の音が、すぐ下から聞こえてきた。リコは僕に気がつくと、ちょっと首をかしげながら振り返った。
「ヒビキ君、どうしたの?」
「あの……、何してんのかなって思って。」
「別に。空を見ていただけ。」
沈黙が流れる。僕は意を決して、言葉にした。
「あのさ、僕と付き合ってくれないかな?」
リコは眼を大きくして、しばらく僕を見つめていた。そして、僕から眼をそらすと、遠くを見ながら言った。
「私、好きな人がいるの。」
「え?」
僕は言葉を失ってしまった。そんな、こんな短い間に? リコは顔色を失っている僕を見て、にっこりと微笑んで言った。
「私達、友達でいましょ、ね?」
2・3日のうちに、彼女が好きな相手を知った。彼は逞しくグランドを走って、ボールを蹴っていた。僕はなんとも言えず、自分が小さく思えてしまった。悲しくなって、一人で坂道を下って、家に帰った。
木々は初夏の匂いを発していた。

それから僕ははじけることにした。文化祭の準備では、下校時間を過ぎて先生から追い出された後に、みんなで壁を乗り越えて暗い校舎の中に忍び込んだり。後夜祭では、キャンプファイヤーを回るフォークダンスで、いろんな女の子と手を繋いだり。休み時間は、教室でギターを片手に歌を歌って、女子達の輪に囲まれたり。
リコのことを、できるだけ思い出さないようにした。
そのうち、詩を書いたり、曲を作ったりするようになった。少しずつ、みんなの前で自分の歌を歌ったりするようになった。

ユミと出会ったのは、それからしばらくしてからである。
(続く)

小説、第1話

「タイトル・未定」

山の中腹にある公園。
遠くには、海が光って見える。
ベンチには、君が座って、僕を見つめている。
そして、ふっと微笑み、僕に話しかける。
「ヒビキ君、大丈夫?」
僕は何とも言えなくて黙っている。
すると、君は不意に立ち上がって、空を見上げて言う。
「空がきれいだよ。」
ノースリーブのワンピースがふわっと広がる。
ああ、綺麗だ。可愛いなあ
お日さまの匂いがかすかにする。
そして、あたりが白く輝きだして、その中に君が消えていく。
どんどん見えなくなっていく……

深い海の底から浮き上がるように、僕は目を覚ました。頭がじんじんして、しばらく夢だと分からなかった。
ユミが夢に出てくるなんて……
なんとも言えないなまめかしい感じが残っていて、心がまとまらなかった。
ホント、ユミに逢ったのは、何年ぶりだろう
そんな感じだった。夢の中のユミは、あの頃のままだった。あの時と同じ微笑みときらめきで……。
僕は重い身体を起こして、枕元のコントレックスを持ち上げて、ごくごくと飲んだ。太陽は高く昇って、もう昼前だった。外からは、近所のおばさん達の話し声が、甲高く聞こえてきた。
お腹が空いていたので、ふらふらとベッドから這い出して、キッチンに行った。冷蔵庫を開けると、そこにはビール何本かとコンビニで買った蕎麦があるだけだった。
とりあえず、缶ビールを開けて、口に含んだ。アルコールが空きっ腹に染み渡った。部屋の中には、脱いだ服が散らかっていて、壁には洗濯物ハンガーに掛かっている。ようやく、感覚が現実に戻ってきた。
そういえば、もう3日も、家から出ていないな
仕事を休んで、もう1ヶ月が経っていた。発端は上司との仕事の方向性の違いだった。現場での小さいやりとりも大切にする僕とは違って、外から来た上司は、理念的な経営を口にするばかりだった。顔を合わせれば、いつも喧嘩をしていた。
ある朝起きると、僕の身体は動かなく、職場に行けなくなった。医者に行くと、しばらく休むように言われ、薬を調合された。僕は帰り道、男泣きに泣いた。なんで、身体を壊すまで頑張ったんだろう。
休んでいることが辛くてたまらなかった。世の中から取り残されている感覚だった。自然と外に出なくなり、食欲もなくなっていった。
部屋の隅っこには、高校の時にバイトして買ったギターが転がっていた。ボディはいつしか傷ついて割れていた。
僕もひび割れたギターみたいだな
いくらチューニングしても、響かないカラダ。手にする気も起こらず、ただ部屋の隅に転がしているギター。何もかもどん底な今。
そんなときに、僕は、ユミの夢を見た。
逢いたいな。君はどうしてる? 今の僕を見て、なんて言うだろう? 夢みたいに、心配してくれるのかな?
どうしようもない今、ユミのことを思い出したら、何か変わるかな。
そう思って、この文章を書くことにした。

僕とユミが出会ったのは、高校1年生の終わりだった。
僕達が通っていた高校は、山の中腹にあり、正門まで長い坂道を登らなくてはならなかった。
(続く)

小説に挑戦します

この、鬱々とした気持ちを少しでもいい方向に持って行けるように、今の自分ができることをしたいと思う。
いろいろ考えたけど、このブログで小説を書いていきたいなと思う。
web小説みたいなもの?

ベースは恋愛小説になるかな。
夢の狭間で生きていた人物が、忘れられない彼女との日々を振りかえる中で、少しずつ生きる力を取り戻していく感じ。
浮き上がって、トンネルを抜ける感じを、うまく表現できたらいいな。

とりあえずは、書き出し。
いつ始まるかは分からないけど、終わりは決めておこう。

ゴールデンウィークが終わるまでに書き上げる^^
できるかな?

つれづれ…

今日は何かやる気が出なくて、ぼんやりとしています(まあ、ホントは理由はあるのですが…)。
暑いし、気分で何となく開けて、飲んでます。ノンアルコールってところが…ですが^^;
いつも同じ調子でいくのは難しいもの。まあ、こんな日があってもいいでしょう。

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自然に任せて

一つ一つの水滴が、それぞれ流れに任せて落ちていき、そして同じ落ち方をするものは、一つもない。
当たり前だけど、これが自然の真理。

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鯉のぼり

神戸ポートタワーのてっぺんに、鯉のぼりが!
そうか、明日はこどもの日、端午の節句なんだ。
粋な計らいに、ちょっと感心。

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青い心のままで

あまりTVは見ない人間だが、これは見なくちゃと思って、ドキュメンタリーの「ラストデイズ×忌野清志郎」を見た。

RCサクセションの頃はそんなに好きではなかったが、発売禁止になった「Covers」あたりから「このおっさん、なかなか根性あるな」と思い始め、亡くなった後に公表された手紙を見て、そのまっすぐな心に惚れ込んでしまった。

清志郎、彼は本当にロックだった。

音楽業界では、政治的なことを歌うとTVの出演依頼も来なくなり、場合によってはミュージシャン生命も絶たれてしまう。
一見自由で、実は心の中まで管理されているこの国、それに挑んでいった清志郎は、強い人間というより、自然とそうなっていたんだと思う。

彼は幼い頃に母を亡くし、実母の記憶がない。それを知ったのは、中学生の頃。
「やっぱりな」という一見冷めたようでもありながら、自分のルーツを知るということは、中学生には結構ヘビーだ。

清志郎は実母が夫を戦争で亡くしたことを知ったことが、彼の「戦争はいやだ」という思いの原点になっていったと思う。
化粧をして派手なパフォーマンスをする清志郎も、高校時代は目立たない、でも学校になじめない、まあどこにでもいる生徒。

何か、すごくよくわかる。そんなもんなんだよな。ステージの上のテンションも、そでに下がった時のテンションも、両極端でも同じ人間のパーソナリティ。人って、そんなもんだよ。
僕も仕事の時とそれ以外とは、まったく別人みたいにテンション違うし。でも、両方とも自分なんだよね。

ドキュメンタリーとしては食い込みが足りないと思ったけど、僕は共感しながら番組を見ていた。
特に心に残ったことばは、清志郎の「大きな矛盾を抱えながら、自分だけの道を探せ」。
僕のこれからも、そういう生き方を探っていくことになるんだろうなと感じた。

最後に、爆笑問題の太田光が言ってたけど、「子どもの心」を持ち続けないと、何かを表現するする仕事って続かないんだよね。でも、それってものすごくリスキーで、一歩間違うと心ない他人に、無防備な心をずたずたにされてしまう。
世の中、いい人ばかりじゃないからね。

人にはそれぞれ原点、分岐点、決断の時があると思う。
今夜は清志郎に勇気をもらったな。

早速のItune Storeで「Covers」を買おうと思ったけど、扱ってなかった。この連休中にレンタル屋に行こう。
何とか、RCサクセションの「風に吹かれて」をYouTubeで見つけたので、そのリンクを張っておく。

ほんと、答は風に吹かれているね。